同窓会たより-2019年度
同窓会たより-2019年度
ドイツに旅して感じたこと(世界市民とは)
同窓会会長 力丸敏光(joyひこばえ)
今年5月から日本では新しい元号の令和になりました。それぞれの方々が、いろいろな想いや決意などをもって迎えられたことと思います。私は60歳になり、還暦でした。それで、思い切って還暦旅行として、ドイツ・オランダ・ベルギー・ルクセンブルクを昨年11月末に行ってきました。
各国でクリスマスの時期を迎えるということで、クリスマスマーケットができ、とても賑わっていました。日本でのマーケットは見たことがあったのですが、ドイツで見たときには感動しました。本やインターネットでみたのではわからない雰囲気や肌で感じる気候など、体験の重要性というのはこのことなのだと感じました。
クリスマスの賑わいの中、駅や列車に乗った時に感じたのは移民の方々のことです。たくさんの移民がドイツにはいて、その方々が難民として社会から受け入れられずにいることに驚きました。ドイツはその難民の方々にも社会保障をし、受け入れているのです。国策としてとても重要なことではありますが、その政策をよしと思われない方々もいます。私も難民の方々の受け入れについてニュースで知る程度で真剣に考えたことがなかったことを反省しました。
世界平和を願い、世界の方々と世界市民としてかかわっていこうと思うモンテッソーリアンとしての気持ちと、難民になられた方々を心のどこかで受け入れられていない自分がいて、自己反省しました。モンテッソーリ教育によって子どもたちに心からの平和を伝えるものとしてどうあればいいのか、これからも考えていかなければならないと思います。日本という海に囲まれ育った私達ですが、これからの令和の時代は日本においても、国外の方々を受け入れ、国外とつながっていく時代だと思います。今を生きる子どもたちが自立し正常化された人として活躍するために、私たち一人一人が課せられた使命をはっきりと持っていかなければならないと思います。
モンテッソーリ教育の文化の領域で子どもたちに知識を伝えていくだけでなく、世界の人々とかかわっていろいろな体験をしていくこともこれからの時代は必要なことだと強く感じた旅でした。
九州幼児教育センターの新たな挑戦と試み
所長 藤原 江理子
2019年度より当センターは、広島大学の衛藤吉則教授による文部科学省科学研究(基盤研究)の一環として設立された、児童発達支援施設「シュタイナー&モンテッソーリ・アカデミー(Steiner & Montessori Academy)」を支援させて頂くことになりました。具体的には、シュタイナークラスと併設されるモンテッソーリクラスの開設を主導し、シュタイナー側の先生方と協力して、発達障害児教育の新たな実践モデルの構築を目指すものです。
衛藤教授からの支援要請をお受けしたのには二点理由があります。第一に当センターとコースの未来のために、新しい挑戦の扉を開くためです。衛藤教授の御研究は、通常の発達支援学級や放課後デイとは異なる可能性があると感じています。子ども達が本当に求めているもののために、価値観の異なる二つの教育法の枠を超えて、大人自身が変わろうとするプロジェクトです。健常児と障害児の差別化を取り払おうとするインクルーシブ教育の視点は、教育法そのものにも対立ではなく、共存をもって取り入れることができるのではないでしょうか。
第二の理由はセンターの設立目的を思う時、最も大切にしたいことです。それは、一番弱い立場の人に、誠心誠意寄り添うことです。子どもたちが安心して居場所とは、教員が子どもたちから真摯に学ぶこととは、一人一人の必要に応える細やかな援助を行うとはどういうことかを追求し続ける場を創ることです。
二歳児のお母様がおっしゃいました。娘を受け入れてもらえるだけでありがたいと。そういう方々と歩める幸せを、これからモンテッソーリ教員を目指す方々にぜひ分かち合って頂きたい、一人一人の異なる要求に応えることの本当の意味と喜びをモンテッソーリ教員として実感できる場を育みたいのです。
当コース設立50周年を前に、モンテッソーリ教育の根本に立ち返る場を頂けたことに感謝致しております。モンテッソーリクラスには幼児から小学生までが集うようになることでしょう。すべてが一から、教具を用いる選択・用いない選択も子どもたちと模索しながら、一歩一歩歩みます。コースの実習生も少しずつ受け入れて、皆で育ちあいましょう。
このプロジェクトに興味がある方、お手伝いしてもいいよ、という同窓生の方がおられたら、センターまで詳細をお訪ねください。モンテッソーリクラスの歩みは今後、良いものも失敗もすべて全国大会の研究発表として、報告する予定です。子どもたちの正しい理解のために、私たち教師自身の研鑽も欠かせない課題です。同窓生の皆さんのご理解とご支援を心よりお願い致します。
姉妹園の認定こども園移行
32期 阿曇洋子(風浪宮保育園)
九州コースでモンテッソーリ教育を学び始めて10年。研修の為に皆様にお伝えできるものはまだありませんが、風浪宮保育園の原点でもあり、隣接する姉妹園「白鷺幼稚園」が幼稚園型の認定こども園「風浪宮しらさぎ幼稚園」に移行した経緯と現状をお伝えしたいと思います。 私は平成2年4月に風浪宮保育園の園長に就任するまで、当幼稚園に8年間在籍し、今も忙しい園長のお手伝いをしています。風浪宮しらさぎ幼稚園も風浪宮保育園同様九州コースで学んで10年目を迎えます。
平成26年4月、少子化、人口減問題がクローズアップされる中、大川市に子ども・子育て支援、保育園、幼稚園を担当する「子ども未来課」が新設されました。その年に2040年までに消滅の恐れがある自治体「消滅可能都市」のひとつとして大川市もリストアップされましたが、対策として当時の鳩山市長は翌年平成27年に、保育料の国基準7割減額!!という策を打ち出します。その延長線上で、市内の全ての幼稚園に認定こども園への移行の打診がありました。白鷺幼稚園の隣には風浪宮保育園があります。保育園のノウハウを有し、認定こども園は“いいとこ取り”と言われているとはいえ、果たして0歳児が入園してもらえるだろうか?主人の園長と悩み、少々不安を抱えたまま平成28年度移行に手を挙げましたが、市内で希望は2園だけでした。半年の間に①基準に合う為に未満児室の拡張工事をする。②在園児、未就園児の家庭に向け、説明会及び見学会を2回以上実施する。
③必要な職員数を確保する。④新しい園名「認定こども園 風浪宮しらさぎ幼稚園」に関する物を全て作りかえる。1番困難だった膨大な県への許可申請書類も同時に進行し半年の間、先生達と協力しながら認定こども園移行に向け突き進みました。
結果、平成28年4月に利用定員1号45名、2号3号10名から始まり、現在1号45名、2号3号利用定員は40名になりました。毎年10名毎に増え職員も幼稚園当時の4倍近い人数となり、大人と子どもの活気あふれる声が園から聞こえてきます。「28年度は絶対間に合いませんよ」とお願いした行政書士から言われた日から4年。「信念をもって目標を定めれば、できないことは無い」事を学んだ日々です。隣接する幼稚園と保育園が互いに切磋琢磨し、子ども達の為に保育を高めていけるよう、これからも努力を続けていきたいと思っています。
(AMI)アシスタント・コース (小学校課程)に参加して
3期 森山 多美子(マリア子どもの家)
2019年4月29日~5月3日・6日~10日の10間、横浜モンテッソーリ幼稚園(小学校は3階)において、日本で最初の(AMI)アシスタント・コース(小学校課程)が開催されました。
幾つかの課題をクリアーすると、修了証明書の取得ができるものです。
【取得の条件】
- 計60時間の講義、討論、活動;(90%以上の出席)
- 9時間の観察(100%の実施)
- 3つの小論文(エッセイ):少なくとも2つのモンテッソーリ先生からの引用を含む(1000~1200文字相当)
- 3つのリーディングの課題:
『人間の可能性を伸ばす為に』 ―実りの年 6歳~12歳―
M・モンテッソーリ著 エンデルレ書店
『児童期から思春期へ』 M・モンテッソーリ著 玉川大学出版部
『平和と教育』 ( M・モンテッソーリ講演筆記原稿)
P・オスワルト,G・シュルツーベネシュ編 エンデルレ書店 - 3つの小さいグループ、および全員での討論
- 教具制作の活動
講義やグループ討論の中で学んだことは、6~12歳の児童期の子どもは、今までの幼児期の子どもとは別の子どもに変容するという事でした。
講師:フィリス・ポティッシュ・ルイス先生
【小学生の心理的特徴】
・想像できる
・理論的に考える
・協力して仕事ができる
・大きな仕事を創造する
・タフで、逆境から直ぐ立ち直れる
・善悪の感覚を発達させる
などでした。故に、当然学びの形態や環境が異なっていました。
又、私が一番知りたかったのは、子ども達が通常の小学校のように机を並べて一斉に授業を受けるのではなく、どんな風に自由に学んでいるのかという事でした。最後の9時間の観察でそれを見ることが出来ました。
3階への階段を上ると、右手奥に下級 (1-3年生)クラス29名、左側に上級 (4-6年生)クラス34名クラスがあります。2クラスのモンテッソーリ小学校です。始業は8時30分。上級クラスでは、日直が前に出てメモを見ながら英語で伝達などをしていました。その後は、1~5人のグループに分かれ各々の課題に取り組む、という学習形態でした。だから、子どもが座る1~5個の机のかたまりが所狭しとある風景です。皆が先生の方を向いているわけではありません。それが12時まで続き、食後も1時~4時までグループ学習。その後、掃除や終礼をして下校となっていました。
上級クラスが取り組んでいた課題は、見た限りですが、「大気汚染について」「家屋の歴史」「お金の歴史」「校庭に咲いていた花の名前を図鑑で調べ、画帳に色鉛筆で描き、説明文を書く」― 途中で靴を履き、屋外に出かけていました。「太古の植物の名前を調べ、絵カードを作る」「顕微鏡を使って、飼っているメダカの水の成分を調べる」「顕微鏡を使って、植物の茎などの構造を調べる」「教具を使って立方根の計算をする」「地球の体積を、地球儀と紐を使って測り、計算する」等でした。
一日の終わりに、その日に学習した課題の進み具合を記録する用紙があり、一人ずつ提出し、確認や助言をもらっていました。又、学習してまとめた結果は、みんなの前で発表する機会があるとのことで、実際に隣の小部屋でその準備をしているグループもありました。
教師は、エレメンタリーの資格を持つ先生、教科も含めてクラスと一人ひとりを見守り補佐する先生、実験などの準備をしてくれる先生、他に英語しか話さない外国人の先生が時々来るようでした。
トイレやお茶休憩を自由に取ってもよいとはいえ3時間も学習が続けられることは、驚きでした。又、従来の、知識を得るための受け身になりがちな学習より、はるかに知識が身に付き、楽しいだろうと思いました。このやり方のほうが、不登校やいじめが少ないに違いない。是非、この事に皆が気付き、理解して広まってほしいと思いました。