私達は九州コースを修了された方をサポートするために活動しています。

同窓会たより-2018年度

同窓会たより-2018年度

みんなちがって、みんないい(金子みすゞ)

同窓会会長  力丸敏光

 今年の日本モンテッソーリ協会第51回全国大会は、東日本震災復興記念を兼ねて、8月2日から4日まで福島県郡山市で開催されました。600名ほどの参加者があり、「インクルーシブ教育とモンテッソーリ教育」―気になる子どもとともに という、大会テーマのもと、学びが多い大会だったように思います。インクルーシブ教育とは、障がいがあってもなくても、ともに生きていける私たちであることです。全ての子どもがそれぞれに大切な役割をもって生まれてくるのです。ですから、一人ひとりの発達の姿は違っても、しっかりと観察し、必要な環境を準備し、援助や支援を行っていくことが大切であることを強く感じた大会でした。

 全国大会のシンポジウムでもお話しさせていただいたのですが、気になる子とは、私達大人からの視点でそう感じるのであり、子どもにとっては、難しいと感じることを環境を整えてくれれば、気になる行動も減りますし、彼ら自身は気になっていないのかもしれません。そのことをよく考えていく必要があるのです。環境設定や援助について、モンテッソーリ教育の理論や教具は素晴らしいものだと確信しています。子どもの困り感により添いながら、その子にかかわる全ての大人たちが、同じような考えで言葉かけや援助・支援を行えればと思っています。

 幼児期や学童期のクラスの子どもは、一人ひとり違います。その違いと良さを認めあいながら、その良さをさらに伸ばしていけるようにすることが、私たちの大切な使命であり、真の「心からの平和」をつくっていく大切な役割ではないかと思います。 子どもたちが本来持っている正常化された姿にむけて、自分で選択し、「できた」「これでいいんだ」といった自己肯定感を高め、自らを大切にする自尊心を育んでいくことが、重要です。そのために、私たちだけでなく、保護者と共に子どもの少しずつの発達を喜び、協力しあい、地域の協力も受けながら、「みんなちがって、みんないい」といった社会になるように努めていければと思っています。

高齢者のモンテッソーリ認知症ケアー自立に寄り添う介護とは?

アン・ケリー先生のセミナー  
2期 水谷純子(大濠聖母幼稚園天使の部屋)

 現在、モンテッソーリメソッドは乳幼児だけでなく、人の一生涯を支えるメソッドとして、世界中に広がっています。

 世界で5000万人認知症の方がいます。日本では2025年に700万人に認知症の方が増えると言われています。(3人に1人の割合です)世界中で認知症ケアー・プログラムのニーズが高まっています。世界中がこの問題をかかえ「どうしたらいいの?」「もっと良い方法はないの?」と模索しています。

 そこで、国際モンテッソーリ協会AMIより認知症プログラムワーカーの養成を許可された唯一の団体MASSのマネージングディレクターモンテッソーリ認知症コンサルタントを勤めておられるアン・ケリー先生(オーストラリア在住)のセミナーが今年7月、東京と岡山で開かれました。

 このプログラムは、モンテッソーリの哲学に基づいて、沢山の方々(医者、訓練方法の専門家、老人学実践の専門家、マリア・モンテッソーリ博士など)で出来ました。このプログラムで行われているホームがオーストラリアにあります。

 アーチビショップ・グディの一日のDVDを見せて頂きました。15カ月前、ただ座って何もしていない人達でした、15カ月後(プログラム導入後)の皆さんの姿は
*今日の日付・曜日・天気のカードを変える人
*セルフサービスの食事(自分で選んで盛ります)
*植物に水をあげる人
*野菜を切る人
*コーヒーを入れる人
*食事の配膳のお手伝いをする人
*ビンゴゲームの番号を言う
*売店の経営者(品物に色分けして値段が4種類有ります)
*編み物をする人
*2人一組でベットメーキングする人
*ブラインドを閉める人
*ナプキンをたたむ人
*食堂に来た人に笑顔で挨拶をする人。

15カ月前、起きる意味のない生活をしてスタッフが全て手を貸さなくてはいけなかったのに、これはどうやってたどり着いたのか?それは、モンテッソーリがきっかけを作ってくれた。

モンテッソーリは生活の質、暮らしの質を高めることをしたかった、良いケアーをしたかった。

*わくわくする環境を作ること・・・その人が自主的にできる、自分で選べる環境

*モンテッソーリの環境を作る意味は・・・個人にとって適切な日々のルーティンの中に組み込まれ、一人一人に割り振られている意味のある活動が、それぞれの一日を満たすように準備されている。

・その人がどんな人なのか分かるカードを、その人の部屋に掛けてあることで、いつでもその人がどんな人生だったのかその人の歴史、何が好きなのか、何がしないのか、どこが痛いのか、何に困っているのか、など見られるようになっています。

・観察をする・・・ご飯をどのように食べているか観察する➡口までスプーンを持っていき食べている➡1カ月後、手を口まで持っていけなくなった➡肘を10㎝位上げてボールを移すお仕事を用意して、しました➡口まで持っていけるようになりました。

 まだまだ沢山の具体的なお話がありました。まだ聞きたい方は1月に大阪でセミナーが開かれますので参加してください。生まれた時から死ぬまでの人への尊厳を強く感じる学びでした。

一斉保育からモンテッソーリ保育に移行して

風浪宮保育園園長 阿曇洋子(32期)

 当園は福岡県の県南、大川市に位置し今年51年目を迎える定員100名の保育園です。

 隣接する幼稚園より昭和43年に分かれて設立されました。開園以来、一斉的な保育を拠り所としてきた園がモンテッソーリ教育と出会う事になったのは、ある出来事がきっかけでした。
平成19年の春、年長組が突然大混乱に陥りました。担任は経験5年目、初めての年長児担任でした。当時の主任の呼ぶ声に、保育室で目にした無秩序な光景は、今でも忘れることが出来ません。園長として何か手掛かりをと、あらゆる研修会に参加していた時に一通の案内文が届きました。「マリア・モンテッソーリ生誕100年」記念行事として大牟田の保育園からの公開保育のご案内でした。早速、職員数名と参加しましたが、各年齢の子ども達が自分の意思をもって活動している姿に、「この教育しかない」と確信すると同時に、これから自園が歩むであろう困難も想像できました。

 紆余曲折、困難も色々ありましたが、九州トレーニングコースで学ぶようになり、今年で10年目を迎えます。「一斉保育からモンテッソーリ教育に移行して変わったところは何ですか?」とよく尋ねられますが、最初に変化したことは大人の意識と環境です。保育室の環境を整え、教育の持つ本質を保護者に視覚的に訴えたことは、その後の保護者の園への理解にとても役立ちました。

 又、「こどもはお世話をしてあげなければならない存在で、重視されるのは計画通りに保育を動かす力量や保育技術の優劣である」という大人主体の考え方から、「こどもが自ら力を自己発揮出来るよう援助する」こども主体の考え方にも変わりました。公立保育園勤務経験のある職員が今年3月の退職の挨拶の中で「この園に来て最初に驚いたことは、先生がこどもに鼻水をふいていいか尋ねていたことです」と話しました。
 
 今、私の自宅の本棚には2種類の本が並んでいます。ひとつは一斉保育に役立った指導計画、保育技術関連の本、そしてもうひとつは「こども」や「お母さん」等他者との関係に今まで以上に深く学んでいく本です。

 大人が変われば、こどもは変わる。実感です。
10年前に食べさせてもらう為に口を開けていたこども達も、自らの意思でスプーンを口に運んでいます。まだまだ学びの道は遠く日々迷うことの多い毎日ですが、「こどもと共に、こども達が幸せな大人になれるよう」これからも進み続けていきたいと思います。

新設 水巻「マリア子どもの家」の紹介            

3期 森山 多美子(マリア子どもの家 副園長)

水巻「マリア子どもの家」

「マリア子どもの家」は、1~2歳の幼児の施設で、今年(平成30年)の4月にオープンしました。それは、水巻聖母幼稚園の保護者の、もっと低い年齢から預けたいという強い要望で、幼稚園の駐車場に建てられました。それで、何かの事情がない限り満3歳になったら幼稚園に移行するというシステムをとっています。又、できるだけ、1~6歳までのモンテッソーリ教育を受けたい人に来てもらいたいということで、比較的制約が少ない「企業主導型保育園」にしたとのことです。

水巻「マリア子どもの家」

 大切にしていることは、カトリックの精神を柱に、当たり前のことですが①子どものために作られた環境の中で安心して生活する。②手を使う、体を使う、五感を使う経験をたくさんする。③全てに始まりがあり終わりがあることを繰り返し経験する。ことを掲げ、無意識の時期の、人としての良い始まりができることを願っています。

 朝は、登園した人から干してあった手拭きタオルやおしぼり・ランチョンマットを畳んだり、ミトンや雑巾などを所定の場所にしまったりすることから始まります。

 色々な体験ができるように、園庭の奥に畑も準備しました。この夏は、サニーレタス・トウモロコシ・トマト・キュウリ・ナス・ピーマン・インゲン豆・カボチャ・ブルーベリー・イチジクなどを収穫しました。

園庭の奥の畑

 恩師、シルバーナQ.モンタナ―ロ先生の教えを大切に、「子どものためにより良い環境を!」を目標に、日々挑戦をしているところです。

 興味がある方は、水巻「マリア子どもの家」のホームページをのぞいてみて下さい。
https://www.mariahouseofchildren.jp/

「熊本地震を乗り越えて」

39期 川口 紗奈(マリア幼稚園 熊本)
私は、コースに入所する2日前に熊本地震で被災しました。1度目の『前震』の後、近所の公園で車中泊をし、2度目の『本震』の次の日には福岡のコースに行かなければなりませんでした。家族と離れ、知り合いも誰もいない環境に行くことへの不安がとても大きく、涙が止まりませんでした。その時は、こんな状況では勉強に集中できるはずがない、と思っていました。しかし、「自分のためにも、子ども達のためにも勉強しておいで」と送り出してくださった園の先生方が、私を支えてくださいました。また、コース長の藤原江理子先生をはじめ、コースの先生方からは、心温まる支援物資を送ってくださり、とても心の支えとなりました。

 熊本地震から2年間コースに通う中、辛いこともありましたが、今年の3月にコースを卒業し、遂にディプロマを取得することができました。あらためて、講師の先生方、園の先生方、同期の先生方の存在の大きさを実感しているところです。皆様に心から感謝申し上げ、これからも励んでまいりたいと思います。

「第51回日本モンテッソーリ協会全国大会に参加して」

                
19期 城戸 裕子(どろんこ保育園園長)

 8月2日から3日間、大会参加のため福島県郡山市へ行ってきました。

 東北だからさぞかし涼しいだろうと思っていましたが、こちらも猛暑、気温も高かったのですが、大会もたくさんの参加者で熱気にあふれていました。

 今回のテーマ-は「インクルーシブ教育とモンテッソーリ教育」との事。我が園でも気になる子が数名おり、職員もその子たちに振り回されて疲弊していく事があります。その子たちが、少しでもより良い方向へ発達していくことができるヒントがあればと期待を持っての参加でした。

 3日間、特別講演、分科会、シンポジウムと、色々な立場、角度からのインクルーシブ教育についての話を聞くことができました。
結果、モンテッソーリ教育は、インクルーシブ教育の考え方と同じだと気づかされました。モンテッソーリ教育は、障がい児教育から始まったので当たり前ではないかと言われるかもしれませんが、文科省がインクルーシブ教育の提言がされたのは、H24年です。それよりおよそ100年も前から、インクルーシブ教育を実践していたかと思うとモンテッソーリがいかに時代の先を行っていた教育だったのか再認識させられました。

 障がいを持っていようと、定型発達の子でいようと、子どもをよく観察し、その子が今発達に何が必要なのかを理解し、その環境を準備することが大切である事。それには、観察する眼、それも子どもの発達の特性を知った上での科学的な眼を養わなければならない事。
大人から見れば逸脱行為に見える物でも必ず意味がある、その行為の中に子どものニーズが見えてくる等。たくさん学ぶことができました。

 今大会の表紙に書かれている、「みんなちがって、みんないい」の言葉通り、一人ひとりのニーズは違います。多様性を認め個性を尊重することがモンテッソーリ教育とインクルーシブ教育の基本的な考え方ではないでしょうか。

編集委員からの情報

こちらのサイトでモンテッソーリ教育に関する情報がご覧になれます
アクセスしてみてください
イデー・モンテッソーリ・ポータルサイト
https://www.ideesmontessori.com/interview/2938.html

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